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あゝ、これぞまさに薔薇色の人生(カミヤ)

クリスマスSS(再掲載)

あゝ、これぞまさに薔薇色の人生

砂上の監獄:カミヤ
暗い
あゝ、これぞまさに薔薇色の人生

「う…ぅっ」

 目の前で男がうめき声を上げている。それもそうだろう。何度も何度もこの鞭で体を叩いたのだから。簡易的な服はボロボロに破れ、体中に真っ赤な蚯蚓腫れが数え切れないほどにできてしまっている。きっとそこに塩でも刷り込めば地獄の苦しみを与えることが出来るのだろう。ああ、素敵な事を思いついてしまった。じっくりじっくり地獄を味わわせる。それが自分が好きな拷問だ。
 他の奴らは手緩い。特に彼は話し合いで解決できるなどと思っているフシがある。まあ、見た目も中身も甘ちゃんなのだろう。少なくとも私は彼のやり方には賛同はしない。

「…」

 馬鹿げた思考をしている間に声が消える。男が気を失ったらしい。ああ、気を失ってしまったら、悲痛な悲鳴も、怯えて漏れる嗚咽も、傷の痛みに耐える呻き声も何も聞けないではないか。思い切り鞭でもう一度殴る。男の体は揺れはしたが反応は示さなかった。まさかと思い彼に近づく。事切れていた。
 大失態だ。くだらない事を考えていたから死ぬ瞬間を見ることができなかった。折角殺してもいいと上から言われたのに。ショックでくらくらする。上は私が拷問にかけた人間を、情報を吐き出させる前に次々に殺してしまうと勝手に勘違いしてあまり拷問官を担当させてくれないのだ。
 確かに最後には殺す、でも情報は吐き出させている。現にこの男もきちんと有用な情報は零した。きっとこれがあればお上の方々は喜ぶだろう。ただし、報告書にはこの男が死んだことも記載される。また暫くはこうした仕事に呼ば得れることもないのだろう。
 裏の仕事がない時、私達裏方は表のフロント企業で務めている。といっても形だけ在籍しているやつもいれば、自分の天職と言わんばかりに真面目に仕事をこなすやつ、私みたいにやっているふりをしているやつといろいろいるが…特にお上の方々も表で何を仕様が言ってこない。たとえ大損失を出したとしても放置だろう。それほど彼らにとって表のフロント企業などどうでもいい無価値な存在なのだ。

「はあ…」

 やってしまったものは仕方がない。頬に飛んだ血を拭って死体を置き去りに部屋を出る。部屋の外で待機していた部下に片づけと報告書の作成を命じて、そのまま自分に与えられた部屋に戻った。
 ああ、やはりここは落ち着く。虚ろな目をした剥製に、蝶々の標本、拷問器具。部屋には死が満ちている。死とは快楽だ。何かが死に至る時の顔が好きだ。死んだ後の寂寞が好きだ。…まあ、理解はされないとわかっているが、機会を奪われるのは納得行かない。
 コンコンと、玄関の方からノックが聞こえた。どうぞと声をかけると、遠慮がちに扉が開く。

「カミヤさん、上の人が呼んでます」
「…またお説教ですか?」
「いえ、新しいお仕事らしいですよー?」

 彼はそれだけ言うとひょいひょいと去っていく。やらかした私にまた仕事とは、今の上の方々は随分とご機嫌なのか、それとも厄介な仕事なのか。早速最上階に向かう。他のフロアとは違う重圧な扉を思い切り開くと、重役のひとりがためいきをついた。

「カミヤ、扉は静かに閉めろ」
「申し訳ございませーん、でお仕事とは?」
「ああ、この資料読んで」

 資料を渡される。そこには、綺麗な女性が写っていた。ああ、とても…とても好みだ。この人が死ぬ姿を見てみたい。

「うちと対立してる組織のスパイっぽくてね。どうも情報引っこ抜こうとしてるんだよ」
「ふぅん…?これを拷問しろと」
「ああ。好きにして構わない、それと…二枚めを見てくれ」

 紙をめくる。同じ組織の拷問官の顔写真と経歴が書いてあった。ざっと目を通す。現在彼女の担当はこの男らしい。しかし、もう担当がついているのに何故私に仕事が回ってきたのかと疑問に思う。もしかし彼が生ぬるいからかと思ったが、私はこの男を知っている。直属の部下ではないので直接接したことはないが鬼畜で有名な男だ。決して、生かさず殺さず、相手の精神が壊れるまでいたぶる。そういうやり方を好むと聞いている。
 最後まで目を通す。“敵対組織のスパイの可能性大”。と備考欄に書いてあった。ああ、そういうことか。

「まずはこの男を拷問すればよいのですか?」
「いや、そいつは拷問する必要はない、殺せ」
「今すぐに?」
「スパイの可能性は大だ、しかしまだ確信がない。確信が持てたら殺せばいい」
「了解」

 資料をその場に放置して部屋に戻りいつもの服に着替え、そのまま彼女のもとに向かった。あんなに綺麗な人を好きにできるチャンスなどまたとないだろう。それに、彼女を使って裏切り者の拷問官をあぶり出すのが今回の仕事らしい。彼女など上からしたら捕まえた時点でどうでもいい存在なのだから。ということは、好き放題してかまわないのだ。胸が高鳴る。きっと、彼女の死に顔はとても美しいのだろうと。

***

「…はあ、これで」

 男の安堵のため息が聞こえた。ほっと胸をなでおろし油断しきった彼にサイレンサー付きの銃の標準を定める。引き金を引くとまっすぐ鉛玉が飛び出して彼の右肩をえぐった。ぶしゃっと血が吹き出す。ああ、ちがう。右腕を狙ったのに。
 私の足音に気がついた男の顔色が変わる。そのまま今度は左足に標準を合わせて引き金を引いた。左太腿に風穴が開く。男の悲鳴があがった。ああ、男女問わずこの悲鳴は格別だ。

「お前、カミヤ…なんで」
「んー、バレてたからでしょうか?」
「…ばれ、いつから…っ」
「さあ?私もよくわかりませんが」

 ずりずりと男が這う。血の痕が廊下を汚していく。ああ、これを掃除する方が可哀想だ。もう一度、今度は右手に向かって引き金を引く。今度こそ狙い通り、右腕に鉛玉が貫通して血が吹き出す。

「…彼女も殺すのか」
「……そうですねえ」

 自分の心配をしたほうがいいのにと思ってすぐにハッとして腹が立ってきた。この男とあの子は良い仲だったから、こうして死の間際にこの世に残していく愛しい人を心配しているのだ。ああ、腹立たしい。彼女はもう私のものだって言うのに。

「ええ、殺すでしょう」
「…」
「でも、貴方のように、虫けらを踏み潰すような殺し方はしません」

 また一発、今度はお腹に。ああ、そろそろ出血多量で死ぬかもしれない。まだ致命的なところにはあてていないが、この血溜まり、そろそろ限界だろう。

「彼女は私のもの、だから…一番美しいと思った瞬間に殺します」
「…どういう」
「私は人の死に顔が大好きなのですよ、息絶えるあの瞬間が人は一番美しい。それを見るのが何よりも気持ちが良いのです」
「…狂ってる」
「おや?」

 今更ですかと、頭に向かって銃を撃った。男の体が一瞬跳ねて絶命する。ああ、こんな男でも死ぬ時はいい顔をするのだなと、ぞくぞくした。動かなくなった彼をそのまま放置して彼女が戻ったであろう組織に向かわせた部下に電話をかける。
 鎮圧はほぼ完了しているらしい、あとは大事なデータを持った彼女がビルに戻ってくるのを待っていると。ああ、クライマックスだ。私は電話を切って即その現場に向かった。部下に運転させている間彼女の死を思い浮かべる。
 どういう方法で殺そうかと。本当は彼女から愛されたい。相思相愛になったら殺したい、でもそれが叶わなかった場合どうやって殺したら彼女が一番美しいまま死んでもらえるだろうか。
 溺死?いや、溺死は美しくない。焼死?それこそ原型がなくなるからだめだ。きっと悲鳴は格別だろうが。では窒息死?ああ、首を絞めて殺すのはとてもいい。間近で死に顔が見れるから。でも、出血多量でじわじわ死んでいくのを見るのもきっと興奮するだろう。それだったら凍死でもいいかもしれない。ただ凍死するような場所に彼女を放置したら絶命の瞬間を見るのも大変だ。いつの間にか死んでいたじゃ物足りないのだから。
 思わずにやけてしまう。ああ、どうやって死んでもらおうか。

「カミヤさん、着きました」
「…ああ、本当だ」

車を降りて、ビルに入る。シーンとしたビルのエントランスの柱の陰に隠れて愛しの人を待った。暫くしてぱたぱたと走ってくる音が聞こえる。ビルに飛び込んできた彼女は本当に何も知らないようでそのまま上に上がろうとエレベーターホールに向かっていく。

「はい、そこまで」
 
 静かな場所では声がやけに響く。私の声に気がついた彼女は振り向いて青ざめた。

「…か、カミヤさん」
「こんにちは、今日は少し曇っていますね~~」

そのまま抱きしめる。
彼女の体はがくがくと震えていた。彼女の質問に答えてあげる。彼女は質問する度声と体を震わせていた。

「とりあえず、このUSBは預からせてもらいますね?まあ…どうせダミーなんですけど」
「どういう…」
「言ったでしょう?全部最初からわかっていたのですって」

USBを床に叩きつけてそのままグリグリと踏み潰す。

「さて、貴方の今後について少しお話をししょうか」

 手を挙げる。部下達が銃を構えて出てきた。腕の中の彼女の緊張がピークに達しているのがわかる。殺されるか、私の手を取るか、その質問に彼女はふるえる声で「殺されたほうがマシ」と言った。ああ、やはり手をとってくれないのか。でも、もう少し揺さぶりをかければいけそうだ。自分の部屋にある可愛い剥製達の事を話す。彼女は、それを拒絶し私の手をとった。
 まあ、どうせ最後はきれいに飾ってあげるのだからどの選択肢を取ろうと意味は無いのだが。

「…貴方が受け入れてくれてうれしいですよ」

 車の後部席に一緒に座って運転手に自分のビルまで戻るようにと言う。俯いて手をギュッと握り恐怖に耐えている彼女が可愛すぎて、頭をなでながら愛を囁く。彼女は何も言わない。それが最後の抵抗なのか、それとも口を開けば悲鳴を上げてしまいそうだからなのかはわからないが、お人形さんみたいで可愛いのでそれもよしとしよう。

「…今日から私が幸せにしてあげますからね」
「……」
「ふふ、すぐに貴方も私を愛してくれますよ」
「…」

 愛したい、愛されたい。愛してくれた人を殺したい。だから、私は彼女に死ぬほど優しくしてあげよう。恐怖で凍りついた心を溶かして絆して、私を愛するように仕向けよう。死に顔を見たい欲求は別で満たせばいいのだから。

「ねえ、キスしていいでしょう?」
「…」
「んっ…」

 無理矢理彼女の顔を上げて、口づけをした。一度だけとてもとても優しく。さあ、私を好きになってくださいね、そして、最高の終わりを迎えましょう。
私の愛しい人。

END




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