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霧島SS

なんかいいねいっぱい頂いたので・・・

彼女が失踪した理由シリーズの
バッドエンドルート回避後のSS
視点はばらばら
第一弾は霧島さんです。

青空とタコさんウインナー

うーんと、大きく背筋を伸ばしてベッドから起き上がる。薄い水色のカーテンからは太陽の日差しが透けて見えた。きっと今日もいい天気だろう。あまり音を立てないようにそっと大きな窓に向かう。
今日は土曜日、桂詞はまだぐっすりと夢の中。いつも働き詰めで疲れているのだから無駄に起こしたくない。折角の休日なのだから存分にリフレッシュしてもらいたい。
少しだけカーテンを開けて窓の外を眺める。思った通り雲一つない晴れ空だ。きっと外はとてもあたたかくて気持ちが良いのだろう。こんな日はお洗濯をしてお布団を干してそれからお散歩なんてしたいけれど、桂詞に黙って外に出ていったら怒られる。
一度、炭酸が飲みたくなって下の自販機に買いに行こうと無断で外に出た時、桂詞にまた監禁されかけたのだ、私は反省する女。もう二度と桂詞に黙って外には出ない。
桂詞は、監禁セットを捨ててない。手錠に枷に猿ぐつわに目隠し全部クローゼットの奥の方にきちんと仕舞ってあるのを私は知っている。だけれど、桂詞が捨てたというのだから捨てたということにしておいている。そんなことを問いただしたところでお互い不幸になるだけとわかっているから。
桂詞の言うことには逆らわない。意思のない人形になったわけではないが、なるべく従っている。勿論、ちょっとした我儘とか、晩御飯に桂詞の嫌いなブロッコリーを出したりはする。けれど、彼の嫉妬心を刺激するようなことだけはしない。
桂詞の発狂のトリガーは否定をすることだ。嫌だとかやめてとか、そういう否定言葉、後知らない男の話、発狂まではいかないが芸能人をかっこいといっただけで彼は不機嫌になってしまう。
 …まあ、もう慣れたので構わないが。
 ただ、時々なぜ自分は彼に付き従っているのかわからなくなる。最初は次に彼の言葉に逆らったら殺されるとか、そういうネガティブな理由からだった。けれど、今は違う気がする。それがなぜなのかはっきりはわからないが。

「なあ」

後ろから低い声が聞こえて体にずんと重いものがのしかかる。首だけ回すと桂詞がむすっとした顔で私の体に自分の体重を載せていた。

「そんなに外に面白いものがあるんだ」

 私がカーテンを開けてぼんやり考え事をしていたのを彼は気に入らなかったらしい。
 起きていたならひと声かけてくれればよかったのに。と思うものの今この状況で言ってもあまり効果のない言葉だと思いぐっと飲み込む。

「洗濯物がよく乾きそうだと思っていたの」
「ほんとに?」
「ほんと、きっと午前中にはおひさまの匂いになるよ」
「じゃあ、一緒に干そう」

 体から重さがすっと消えて、のそのそと大あくびをしながら洗面所に向かっていくのが見えた。私はロックを外して片側の窓を全開に開けた。
 さわやかな風がひゅうっとカーテンを揺らす。ああ、気分がいい。今日はお部屋のお掃除もしてしまおう。物干し竿に大きなランドリーハンガーと小さなランドリーハンガーをふたつかけて桂詞の帰りを待つ。
 しばらくして桂詞は二人分の洗濯物の入ったカゴを持って戻ってきた。軽度の運動のせいか、眠そうな顔つきはいつもの顔つきに戻っていてたが動きは緩慢なままだった。

「俺はこっちのやつ干すから」

お前はこっちなと、適当に山を渡される。本当はどこに干すとかだいたい決まっているだが彼はお構いなしにぱちぱちと引っ掛けていくのでまあいいかと思い私も適当にハンガーにとめていくことにした。

「ああ、これ昨日お前が履いてたパンツ」
「ちょっと、わざわざ言わなくてもいいでしょ」
「改めて見ると可愛いデザインだよな」
「ちょっと桂詞、返して」

改めてまじまじ下着を見られると恥ずかしくなる。普段はささっと薄暗い部屋で脱がされてしまうものだから、こんな風に陽の光の下でじっくり見られるなんて思いもしなかった。
ぱっと手を伸ばして奪い取ろうとするとひょいっと天高々とあげられてしまう。ピンク色のパンツが風に吹かれてひらひら揺れる。

「桂詞、恥ずかしいから!」
「お前のそういう顔好き」
「いじわるしないでよ」
「じゃあ、俺にキスしてくれたら返してあげてもいいよ」
「ここで?」
「ここで」

 パンツを掲げたままキスをせがむいい年をした男が何処にいるのか、ああここにいるのか。仕方がないと私は目を閉じたまま唇を尖らせている桂詞の顔に自分の顔を近づけて、鼻先に軽く噛み付いた。
いってと声がして腕が下に降りてくる。

「はい、返してね」

その隙にばっと手から下着を奪い去り、さっさとピッチに挟む。彼は不満げに私をじとっと見ると赤くなった鼻先をこすりながら口を開いた。

「お前やるようになったな」
「なにそれ」
「いや、別に」

 今度は不満そうな顔がぱっと上機嫌に。やっぱり彼のことはよくわからない。不機嫌スイッチと上機嫌スイッチの切り替えが本当に謎だ。

「今日はさ」

 全部洗濯物をかけ終わってから彼はぽつりと言葉を漏らした。

「お前の好きなところに行こう」
「…」

 そのまま考え込む。お前の好きなところに行こう?私の好きな場所に連れて行ってくれるってこと?桂詞が?いつも彼が行きたい場所に連れ回されていたのにどういう風の吹き回しなのか。まさかまた試されているのか。色々な思考がぐるぐると頭を巡って言葉がでない。

「なに、なんか言えよ」
「いや…えっと」
「どこでもいいよ、動物園でも遊園地でも温泉でも、コンサートでもいい」

 いきなり言われても思い浮かばない。なにせ今まで本当にそういった明るい娯楽とは無縁だったものだから。
 考え込む私を見て桂詞は久々に見るにこやかで穏やかな笑みをたたえて見守っている。ああ、この顔は。

「どうした?」
「え、えっとなんでも…ない」

 私の好きだった”霧島君”の顔だ。
私の事を真剣に考えてくれて、私の大事な友達だった霧島君の顔。大人になった彼の顔だった。
 どくんどくんと胸が高鳴る。私、本当はあの時霧島君の事、好きだったんだよ。でも霧島くんはきっと私の事を友達としか思ってなかったから、それに貴方はいろんな女の子にモテていたから諦めたの。友達でいれば霧島くんの側にいられるでも、好きになっちゃったら、告白したらきっとこの心地よい関係も終わりだって。だから、わたしは。
 昔封じ込めた彼への思いがぶわっと溢れ出す。蛇口を捻ったかのように止まらない。

「じゃあ…一緒にピクニックに…行きたいな」
「ピクニック?」
「そう、お弁当持って、公園のベンチで…子供っぽい?」
「そんなこと無い、お前が望むなら」

 桂詞がくしゃっと笑顔を作って私の頭を撫でる。ばくばくと心臓が跳ねていく。きっと私の顔は情けないくらい真っ赤になっているのだろう。
 じゃあお弁当作らないとね!と慌てて彼を残してばたばたと部屋の中に駆け込んだ。

 私は、きっと今も昔も彼が好きなんだ。
 昔好きだった霧島くんは少し変わってしまった、だけど、私は、今度は桂詞を好きになってしまったんだ。少し乱暴でやり方が気に食わなかったから好きだなんて認めたくなかったけども。

「桂詞、お弁当のおかず何がいいかなー?」

 大きな声でベランダの彼に向かって質問を投げる。

「じゃあ、タコさんウインナーと卵焼きと…あ、ブロッコリーはいらない」

 昔と変わらないのね。
 高校の時、貴方は私のお弁当のタコさんウインナーと卵焼きをいつも取っていった。
で、いらないブロッコリーを私のお弁当箱にいれてくるの。そんなの等価交換にならないなんて喧嘩した気もする。
 今までちょっと意地悪されたから、今度は私が意地悪をしてやる。
 まずは、タコさんウインナーじゃなくてカニさんウィンナーにする小さくてとっても意地悪なことからはじめてみようか。

End




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